HEISEH_outlaw’s blog

俺のアウトローな人生。お前らの知らない世界を俺は知ってるぜ?

【少年院生活が始まる】

初等少年院送致とする」

この一言で俺の1年間の拘束が決定した。

今思えば1年間なんて、と思うくらいだが、その当時の1年間はものすごく先に思えた。

 

俺は当時中3の歳になっていたから、卒業式に出られないのは明白だった。

 

少年院送致が決定し、また鑑別所に戻される。

朝乗り合いしていた少年は、減っていた。

恐らく外に帰ったんだろう。

羨ましかった。

俺は一刻も早く外に出てタバコを吸いたかった。

またみんなと遊びたかった。

 

でも、もうどうしようもなかった。

どこの少年院に行くかが決まるまで、鑑別所で生活をすることになるらしい。

遅くても1週間ということだった。

 

また入所手続き。

慣れたもんだ。

"オヤジ"と呼ばれる教官がいた。

「〇〇帰ってきたのかぁ。少年院しょうがねぇな、しっかりやってこいよ」

そんなことを言われたが、俺の心には響かない。

そのオヤジとは仲が良かったが、その時ばかりは耳に入らなかった。

 

結局行く先の少年院が決まったのはその数日後。

俺は教官に呼ばれ、部屋を出された。

他の部屋に連れて行かれ、少年院の説明を受けた。

瀬戸少年院

というところだった。

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驚きだったのが、リュック眼鏡ヤンキーもそこにいるとのことだった。

共犯が同じ少年院に行くことはたまにあることらしい。

ちなみにイケメン高身長野郎は、県外の遠いところだった。

俺は少し浮き足立っていた。

再逮捕の時期が一緒だった、ということもあり、瀬戸少年院にいくタイミングもほぼ、ばっちり一緒だった。

なぜかホッとした。

しかし場所は少年院。

ルールがだいぶ厳しいらしい。

色々説明を受け、どういう教育があるのか全て把握した。

入院したてのやつは、新入時教育というのを受けるらしい。その後4段階くらいにわかれ、教育が行われるということだった。

出発は数日後。

 

俺はどんなところだろう。と緊張していた。

見栄だけは崩さないでおこうと決めていた。

俺の心はまだヤンキーだった。

 

出発当日、鑑別所の教官に連れられ、瀬戸少年院に向かうことになった。

ここでもやはり、手錠だ。

もう慣れている。

 

どのくらい車で走っただろう。

やっと到着した場所は、山とまでは言わないが、周りがのどかで、すごく静かなところだった。

 

入所室みたいなところに連れて行かれる。

俺は肩で風を切り歩き、教官にも生意気な態度だった。

色々質問をされたが、生意気な態度で全て返していた。

俺の見栄はそこで一瞬にして潰された。

3人くらいの教官に、一斉に詰められた。

罵声をあび、しつこく怒鳴られた。

「まじかよ、少年院ってこんなとこなのか」

俺は少年院の厳しさを悟った。

同時に萎えた。

こんなところで1年過ごせるかよ。

そんなことを思い、しぼんでいた。

それでも見栄は、張っていた。

何食わぬ顔で罵声を受けた。

だけど、心は沈んでいた。

 

ひと通りの言い合いと、荷物の整理を終えたとこで、部屋に案内される。

訳の分からない道を教官について歩く。

バスで到着したでかい建物は、教官用の建物らしかった。その建物の奥に入っていき、広々とした土地がその奥に広がっていた。

平屋の寮がいくつも見えた。

その周りでは、草刈りをしている帽子を被った坊主頭たちがいた。

こっちをチラチラ見ているやつもいたが、そいつは教官に怒鳴られていた。

俺は本当に新入りの気持ちだった。

右も左もわからない。

そしてある寮に通された。

そこは単独室がずらっと並ぶ寮だった。

名前は確か、考査寮だったか。

そこに入ると、すげーでっかい声で

「はい!!!」

「お願いします!!!」

とかいろんな声が聞こえてきた。

「先生失礼します!!質問よろしいでしょうかぁ!」

 

おれはぞっとした。

なんだここは。

こんな大声でなにを言ってる。

俺は衝撃をうけた。

そんなことを思いながら、部屋についた。

 

部屋は、

単独室になっており、鑑別所とは違い、硬い畳のベットがあった。

床はコンクリート、全部で3.4畳くらいだろうか。

部屋に入ってすぐ右側には洗面台。

壁もなにもない丸見えの便器。

次にベッド。

その横にパイプの机と椅子だ。

その奥には鉄格子がかかった窓がある。

質素な部屋だった。

色々な服を渡された。

チノパンにカッターシャツ

部屋着のグレーのスボンとグレーのTシャツ。

細すぎるベルト。

パンツ、靴下、筆記用具、鞄など色々と渡された。

名前入りのバッジも渡された。

 

話を聞くと、

この少年院には、7つの寮があるみたいだった。

1〜5学寮。そして6学寮。もう一つは考査寮。

俺がいるところだ。

期間別に級がついているらしく、

2級下(白バッジ)3ヶ月

2級上(黄色バッジ)3ヶ月

1級下(緑バッジ)3ヶ月

1級上(赤バッジ)3ヶ月

と進級していく仕組みらしい。

毎月成績表を渡され、進級式というものが行われるみたいだった。

3ヶ月毎に成績が良ければ次の級に進める。

その成績というのは、基本的に生活態度や、人間関係など。

 

もちろん俺は白バッジを渡された。

その白バッジの時期というのが1番キツイみたいだった。

考査寮という、今俺がいる寮には、

確か4週間滞在し、この少年院のルールや厳しさを徹底的に教え込まれる期間となっていた。

 

そしてその後、集団寮という20〜30人で生活をする、

1〜5学寮に分けられるみたいだった。

 

本当に色々なルールを説明されたが、

この期間で暗記しなければいけないというものを提示された。

それは"遵守事項"というものだった。

少年院で絶対に守らなければいけないルールだ。

それに反すると、進級できず、少年院の滞在期間が伸びるぞというものだった。

内容は、ほんとに少年院独自のものだった。

48項目くらいあった気がする。

それを全て暗記して、すらすら言えるようにしろとのことだった。

人のものを盗むな、毛を抜くな、刺青を入れるな、大声を出すな、喧嘩するな、人と喋るな、色んな簡単なことが難しい言葉で並んでいる。

そして、ここでいう教官は"先生"と呼ぶらしい。

 

全てが上の空だった。

なんだここは。

全てはその言葉に尽きた。

 

俺は先生に呼ばれた。

「はい」

返事をした。

「声が小せぇっ!!!」

いきなり怒鳴られた。

鉄のドア越しに、返事のデカさの練習が始まる。

はいっ

はいっ!!

はいっ!!

はいっ!!!

 

よし、出てこい。

こんな感じだった。

 

長い廊下に新聞が引かれ椅子が置かれている場所があった。

断髪式だった。

俺は髪を伸ばしていた。

坊主にされるのは野球時代以来だった。

俺は結構なショックを受けた。

先生がもったバリカンが頭を回る。

全て丸っと刈られた。

 

少年院生活が始まった。

俺は坊主になった自分を鏡で見て、相当落ち込んだ。

 

今日から1年間、少年院生活が始まる。

 

つづく

 

※ここからは、少年院生活編が続きます。

中での内容を記憶の限り、詳しく書いていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初等少年院送致】

3度目の逮捕。

それは慣れたもんだった。

手錠にも慣れていた。

手錠をされていることに違和感を感じなくなっていた。

 

俺はまた留置場生活。

取り調べは数日で終わった。

留置場生活は基本的に20日間だ。

残りの日数をどう過ごすか。

そんなことばかりを考える日々。

1日3冊まで部屋に持ち込める本。

基本的に小説ばかりを読んでいた。

推理小説ばかり。

これは喫煙者逮捕あるあるかもしれないが、

小説の中でもタバコを吸っている場面で、めちゃくちゃタバコが吸いたくなるもんだ。

 

留置場の運動の時間は、成人がタバコを一本吸えた。

その煙の臭いにも敏感に反応してしまう。

「看守さん、タバコくれよ」

何度も言ったが、当然くれない。

ずーっとタバコが吸いたかった。

 

そんなくだらないことばかり考える日々。

俺はこの先少年院に行くことになるのか。

どんなところなんだろう。

行きたくねぇな。

そんな気持ちが募るようになってきた。

 

無駄に長く感じる留置場生活20日間、3度目を終え、

再び鑑別所に入ることとなる。

俺は慣れたように入所した。

 

ここまでくると、鑑別所の方が居心地が良くなってくる。

風呂は週に2回、というところは変わらないが、圧倒的に生活感があるのは鑑別所だ。

毛布しかない留置場とは比べものにならない。

なんか、よくわからないけど鑑別所に来れたことが嬉しかった。

新鮮だった。

留置場を抜け出せたという達成感からなのか。

また俺の鑑別所生活が始まる。

 

鑑別所では、調査官と呼ばれるやつがいる。

そいつは俺ら少年の生活を調査し、裁判官に報告するんだ。

調査、と呼ばれる面接が何回か行われるが、俺はもはや少年院送致を覚悟していた。

それでもやはり、自分をよく見せようと必死だった。

もしかしたら、覚悟は決まっていなかったのかもしれない。

 

ある日、鑑別所に刑事が来た。

取り調べという名目で呼ばれた。

内容は、イケメン高身長野郎が罪を認めたことによって調書の書き直しをするというものだったと記憶している。

イケメン高身長野郎は、後から聞くと、短期の少年院をあと2ヶ月とかで出れるくらいまで来ていたみたいだったが、少年院で再逮捕されることになったらしい。

だいぶ辛いだろうが、しょうがないことだった。

結局調書の書き直しをし、その日の取り調べは終わった。

 

そんなこんなで、俺は審判の日を迎えることになる。

審判の日の前日、部屋の荷物をまとめる作業があった。

鑑別所で購入した物品。

自分の下着、タオル、シャンプー、歯ブラシ、歯磨き粉、差し入れてもらった本線、手紙などだ。

それら全てを、"持って帰る"ものとして、かごにつめていく。

俺は確かに明日審判を受ける。

だけど、なぜか鑑別所を出るために物を片付けているその動作が、家に帰れる物だと錯覚させられる。

俺はウキウキしながら、自分の荷物をつめていく。

部屋がすっきりする。

そして、審判前夜、入社してきた入所室にいく。

物品の整理だ。

手紙が何通か、本は何冊か、歯磨き粉はあるか、全てノートに書かれ、数をチェックされる。

そんなことをされていると、ますます出れる気分になる。

 

その日の夜はあまり眠れなかった。

なんでだろう。

審判に対する緊張なのか。

なんて裁判官に話そうか、どう答えようか、そんなことばかりを考えていたからなのか。

裁判官に聞かれる質問は、あらかじめ教官とかの話を聞き、わかっていた。

「鑑別所でなにを考えて生活していましたか。」

「この先、どうすれば同じことを繰り返さないのか」

「外に出たら、どうしていくのか」

そんなことの返答をひたすら考えていた。

 

気付けば審判当日になっていた。

俺は緊張していた。

上手く話せるのか、外に出られるチャンスはないか。

色んなことを考えながら、教官に呼ばれた。

入所室にいく。

また、同じように手錠をかけられ、

その日審判の少年何人かが、乗り合いで護送車に乗せられる。

 

俺は家庭裁判所にいく最中、色んなことを考えていた。

ひたすら質疑応答を繰り返していたかもしれない。

家庭裁判所についてから、審判への流れは詳しくは覚えていない。

鑑別所から出る際、自分の荷物を紙袋に入れられて渡される。

自分の荷物だけを持っていると"外に出られる"という期待感を持たせられる。

家庭裁判所での審判には、親、弁護士が付き添うことになっていた。

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審判のとき。

手錠をしていたか、していなかったかはだいぶ前のことだから覚えていないが、審判の会場には裁判官、調査官、弁護士、そして親がいた。

 

裁判官から色々質問をされる。

1番初めは住所とか生年月日とか名前を言わされ、その後に罪名を言われた気がする。

色々と質問をされたが、想定内の質問ばかりで、応用をきかせ、対応できた。

俺は、まじめに見せるのが得意だった。

話の受け答えは昔から上手かったし、年上の人に気に入られるような立ち振る舞いが得意だったから、なかなか上手いこと答えられた。と思った。

 

一度審議をしますのでご退出を、と言われ、親、俺、弁護士は法廷の外に出ることになった。

そこまで待たされなかった。

誰かから聞いたか、読んだ話だが、審議になることはあまりなく、審議になった場合、『試験観察』か

『保護観察』になることが多いと知っていた。

俺は密かに、期待していた。

これで出られるかもしれない。

そんな甘い期待をしていた。

リュック眼鏡ヤンキーも少年院、イケメン高身長野郎も少年院。

それなのに俺だけが出られるわけがない。

そんなことはわかっていたのに、期待していた。

 

再び部屋に呼ばれる。

「君が真面目にやっていく気持ちがあるのはよくわかる。しかしやっていることが重大すぎる。」

そう言われた。

判決をくだされた。

 

「君を初等少年院送致とする。」

 

隣で親が泣いた。

すすり泣きが聞こえてきた。

わかっていたはずなのに、目の前が真っ暗になる感覚がする。

涙がでそうだ。

親になんて顔をすればいいかもわからなかった。

「ごめん、頑張ってくるわ」

そんなことしか言えなかった。

 

俺は少年院へ行くことが決定した。

 

つづく

 

 

 

【鑑別所でまた逮捕】

鑑別所での生活を卒なくこなすようになっていた。

朝の身辺整理で指摘を受けることもなくなり、

ルールを守るいい子として生活を送っていた。

 

次々に入ってくる少年が多い為、部屋の入れ替わりが激しかった。

夜にいつも教官が放送で語る内省の時間があるんだが、その時に教官が話していた。

 

昔はもっと人が多く、集団部屋(鑑別所には個室と集団部屋がある。)に人が詰め込まれるくらいにいたらしいが、この当時も相当多かったみたいだ。

この当時の部屋も結構多かったみたいだ。

 

そんなある日、俺は集団部屋に部屋替えされることとなった。

 

初の集団部屋にワクワクしたが、実際に生活が始まってみると、つまらないものだった。

見栄を張った奴らの集まりが3〜5人で共同生活するんだ。

たまったもんじゃなかった。

狭い。

臭い。

トイレはひとつ。

喋れない。

目も合わせない。

黙々とすぐ隣に人がいるのに、自分のことをこなす。

なかなかなストレスだった。

ただ、共同部屋というのは、生活をちゃんとできていると認められたやつがいける部屋なんだ。

それが唯一嬉しかった。

俺は少年院を逃れ、鑑別所から審判を受け、そのまま出ることが目標だったから。

 

しばらく集団部屋も慣れ、少しずつひとが減っていく。

審判が近づくと個室に戻されるんだ。

そのため、集団部屋にも人が少なくなってくる。

ストレスも少しずつ減っていった。

 

ある日、親が面会に来てくれた。

どんな顔をすればいいのか、眉毛も髪の毛もなにもかも剃れない、切れない状態で会うのは、正直恥ずかしかった。

 

面会室に行くと、心配した顔の親が座っていた。

俺はすごく申し訳ない気持ちが湧き上がり、涙が溢れそうになる。

俺が悪いことをしたことを責めるより、今の生活を心配しているところが見えて、俺は涙を堪え切れなくなった。

その時は心から後悔し、反省していたと思う。

30分もない、短い時間のためにわざわざ会いに来てくれた親に感謝と申し訳なさがあり、

俺は真面目にやると誓った。

親とも約束していたんだ。

もう悲しませたくなかった。

 

ただ、俺は前にも言ったように、刑事に言ってないことがあったんだ。

その後ろめたさは、

もう事件のことを話していない。ということすら忘れていたから、全く無かったんだ。

俺は普通に審判を迎え、出所するだけの気持ちでいた。

 

面会はすぐに終わった。

とても短く感じた30分だった。

家に帰りたくなった。真面目にやっていきたかった。

俺の決意は真面目にやること。しかなかった。

 

鑑別所での生活も長くなり、審判の日が近づいてきた。

俺は個室に移された。

それまでの期間、警察の取り調べは続いていた。

残りの余罪はないか。

他にやっていることはないか。

毎日毎日言われたし、聞かれた。

俺はずっと黙っていた。

言わない方がいいと思っていたからだ。

けど、俺は面会に来てくれた親に会い、真面目にやらないといけないという気持ちが芽生えていた。

審判が近くなり、個室になってからも

取り調べにきていた。

 

警察に諭されたのかもしれないし、

親に対する申し訳なさだったのかもしれないし、

ずっと黙っていたことが苦痛だったのかもしれないが、俺は警察にとうとう話したんだ。

今まで隠していた、重犯罪を。

内容までは言えないが、俺は告白した。

全てを話した。

俺は楽になりたかったのかもしれない。

少年院にはいきたくなかったが、真面目にやりたかったのかもしれない。

 

話した後、なんだかスッキリした気持ちになった。

刑事の前でも泣きそうになったが、なんとかこらえた。

 

それから数日経ち、朝教官に呼ばれたんだ。

荷物をまとめろって。

なんのことだと思いながら用意をし、ここに入所したときにいった部屋に通された。

 

刑事がいた。

 

「お前を再逮捕する」

 

俺は鑑別所の中で、再び逮捕状を見せられた。

審判間近だった。

まさか、また逮捕されるなんて思ってもいなかった。

俺が話したことは、審判に影響を与えるだけだと中学生の俺はなんの知識もなく、思い込んでいたが

元々の逮捕容疑より悪質なことだったため、また逮捕しなければいけないとのことだった。

 

俺は手錠を再びかけられた。

腰縄もされた。

気付けば留置場にいた。

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今日から俺は鑑別所の少年ではなく、留置場の中の容疑者に逆戻りした。

そのとき思ったんだ。

リュック眼鏡ヤンキーは、もう少年院にいってるのか?

俺より先に逮捕されていたけど、あいつはどうなっている?

そう、リュック眼鏡ヤンキーも共犯だった。

イケメン高身長野郎もだ。

イケメン高身長野郎、あいつは否認しているみたいだった。

あとから刑事に聞いたら、審判を受け、短期の少年院にいったと聞かされた。

 

次の日、逮捕されたら必ず行く、家庭裁判所に連れて行かれた。

またすげぇ時間待たされていた。

車の中だ。

両脇には警官。

俺は外を眺めていた。

 

そしたら、坊主になったリュック眼鏡ヤンキーが手錠をされながら、肩で風を切って刑事に連れられ歩いていた。

 

俺は衝撃だった。

そいつはもともとロン毛に近かった。

それがなんだ、眼鏡かけてリュックは背負っていないが坊主だ。

 

少年院ってところがどういうところか、俺はその時少しだけ分かった気がする。

坊主ってだけで、つんけんして見栄を張っているそいつの姿は変わっていなかったが。

少年院に一度入り、そこで再逮捕されたんだなってわかった。

なんか、寂しさも少し紛れたきがする。

 

裁判所での手続きもおわり、留置場に戻る。

今回の留置場は1人だった。

めちゃくちゃに暇だった。

事件のことも素直に話し、取り調べもちゃんと進んでいた。

イケメン高身長野郎が否認しているということ以外は。

 

なぜだか、取り調べが続く。

イケメン高身長野郎が言っていることと、俺らが言っていることが食い違うからだ。

調書というのは、事実関係をしっかり合わせて、全員が一致したことを言っていないと検事に出せない。

調書を検事が見て、色々と判断をするみたいだ。

刑事より検事は強い。

そこで下手な調書は出せないんだきっと。

 

俺は取り調べがすっきり終わらないまま20日を過ごした。

イケメン高身長野郎は、いつになったら本当のことを喋るのか。

俺らはそんなことを思いながら、日々過ごしていた。

少年院にいるから嫌なんだろうって言うのはよくわかっていた。

留置場20日目、俺はまた再逮捕された。

これで3度目の逮捕だった。

恐らく、取り調べがしっかり終わっていないから、わざと別件で逮捕状を取ったんだと思った。

 

また留置場生活が繰り返される。

リュック眼鏡ヤンキーは坊主で再逮捕で留置場。

俺はまた再逮捕で、留置場。

イケメン高身長野郎は、恐らく短期の少年院で出院するために生活している。

短期の少年院というのは半年で出院だ。

 

ま、自分のしたことだからと3度目の逮捕を受け入れていた。

もうこの生活にも慣れてしまっていた。

刑事とも元々外にいる時から、仲が良かったし、この留置場生活でもよく喋るようになっていた。

 

とはいえ、もう結構うんざりだった。

いつ終わるのかわからない留置場生活。

結構辛かった。

 

また留置場生活が繰り返される。

取り調べも地味に続く。

この先俺は確実に少年院に行くことになる。

その現実をまだ受け入れ切れてなかった。

 

つづく

 

次回、【2度目の鑑別所】

【初の鑑別所】

俺は車に揺られ鑑別所に到着した。

手錠を外される。

氏名、生年月日、住所を言わされ、本人確認をされる。

なにか変なものを持ち込んでいないか、留置場でされるような検査もされる。

 

服は支給されるみたいだ。

服のサイズを聞かれたり、足のサイズを聞かれたり。

確か、全て青っぽいジャージみたいなものだった気がする。

中学とか高校で着るようなそれだ。

 

なにやらかごに色々入ったものを持たされ、部屋に案内された。

手錠をはここの中ではされないみたいだった。

青いジャージをきて、教官と部屋まで歩く。

留置場とは違い、広い建物だった。

いく扉いく扉、すべて重い扉になっており

全て厳重な鍵がかけられていた。

部屋に到着した。

すでに鑑別所内は就寝間際の時間らしく、

廊下はすでに暗かった。

部屋はこんな感じだった。

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窓には鉄格子。

第一印象としてはすごく狭いだった。

 

部屋に入ると、ここでのルールや決められた日課、タイムスケジュールなどを説明された。

 

創作活動というものが、あり

絵日記みたいなもので自分の人生を振り返ってみよう。

みたいなものとか。

色んな書類を毎日書いたり、とかしないといけないみたいだ。

なんか小学生の気分だった。

風呂は週に2回。一回20分をタイマーで計られる。

留置場と一緒だ。

ゆっくり入れたもんじゃないし、週に2日はだいぶきつい。

夏なんて最悪だ。

俺の初の鑑別所が、夏だったか、冬だったかは覚えていないが

夏はちっちゃい扇風機を部屋に貰えるが、夜は消される。

冬は厚着をしてしのぐ。

あまりいい環境ではなかった。

ただ、留置場と違うのは、飯がマシになったことだ。

留置場の飯は食えたものじゃなかったが、鑑別所の飯はまだマシだった。

留置場に比べたらむしろうまいと思った。

話が少し逸れたが、

鑑別所のルールのもう一つに、他者と会話をしてはないけない。

笑い合ってもいけない。

というルールがある。

【鑑別所】というのは、成人でいう裁判。

少年で言うところの【審判】というものを受けるまでに、この少年はこのまま外に出していいのか。

少年院に行ってもらわないと行けないのか。

というのを鑑別するところだ。

そのため、そのルールを守れているかどうか。

というところもよく見られるんだ。

 

だからみんな、よくルールは守る。

いい子ちゃんの振りをするんだ。

そんなので鑑別して、外に出したところで

同じことを繰り返すのは、目に見えてるんだけどな。

絵日記とかでも全て観察されている。

ちゃんと書きましょうというのが、ルールだ。

 

あと、週に一度。

【運動】に参加することができる。

鑑別所の建物の中心に吹き抜けの運動できるスペースがある。

そこで、筋トレやボール遊びなど、決められたルールの中で教官が仕切り、運動することができる。

 

朝から、夜までの流れをざっと説明もされたが、一度探してみないとわからない。

鑑別所の初めての夜、初めての就寝を迎えた。

 

就寝前、部屋の電気が暗くなり、曲が流れ出す。

メロディだ。

あれはなんだったかな。

ゲド戦記の。

テルーの唄か。

あのメロディが流れた。

すげー悲しく、虚しい気持ちになったことは忘れない。

外で聴くといい唄なんだろうが。

鑑別所で聞くと切なすぎる。

今でも忘れない。

 

やはり、俺は泣いていた。

気付けば泣いていた。

廊下を教官が巡回している。

「どうした?寝れないのか?」

いや、大丈夫です。

 

俺は静かに泣いた。

疲れていたからか、さすがに眠れた気がする。

 

鑑別所での初めての朝を迎えた。

曲が流れる。

この時の曲はなんだったかは覚えていないが、それで毎回目が覚め、

「起床ー!!!」

教官の一言で、鉄扉の前で正座し、教官を待つ。

教官がきて

「おはよう!!」

と言われる。

俺はいい子を演じ、おはようございますと返す。

全ては少年院送致を免れるためだ。

 

鑑別所は四角形になっていて、東西南北それぞれに部屋が並んでいる。

東の1の部屋、東の2の部屋というように、全て

の少年への教官の挨拶が終わると、清掃の時間になる。

 

お茶漬けカラーみたいな布団を綺麗にたたみ、シーツも綺麗にする。

こうしてください。

というような手本のとおりにやる。

 

そして掃除をする。

これも常に見られている。

普段の生活のあらゆるところが、俺の審判の結果へ繋がると考え、すべてをきっちりやった。

トイレもぴかぴかだ。

 

順序は正確には記憶が間違っているかもしれないが、次に生活点検みたいなのをされる。

 

教官が各部屋にはいり、外でたって待たされる。

掃除ができているか。

布団を綺麗にたたんであるか。

変なものを隠していないか。

全て見られる。

俺は初めの点検で、色々指摘を受けた。

自分では綺麗にしているつもりのものを、全て指摘された。

厳しいなと思ったが、素直に受け入れた。

全ては審判のため。

それしか頭にはなかった。

鑑別所にいる期間は通常1ヶ月だ。

そこから審判を受け、どうなるかの処分がでる。

 

犯罪の内容的に俺は、少年院送致が決まっていたようなものだが、【試験観察】という処分を狙っていた。

これは一時的に様子見で外に出し、その後共犯とつるんでいないか、悪さをしていないかを確認され、もう一度審判を行うというものだ。

 

全てはそのためにやっていた。

 

次にラジオ体操がある。

部屋にあるテレビで、ラジオ体操が流れる。

それにそって、狭い部屋でやるんだ。

これがまた恥ずかしい。

1人でやるもんだから、なんともないんだが、

教官が回って見てくる。

やってらんなかった。

だけど、全ては審判のため。

俺はしっかりやりきった。

 

朝食が食器口に配られる。

それを食べる。

その後創作活動で、絵日記をつけたりと時間を過ごした。

ここもきっちりやった。

過去の自分を、振り返るのは正直嫌だった。

生まれた時のこと、親への気持ちなどを振り返ると自分のやってきたことに後悔するからだ。

だけどやりきった。

 

その後は色々と指示されていたことをやりながら、一日を過ごした。

夜、日記をつける時間がある。

その日記の内容も全て見られる。

良いように見られるように書くことが、俺は得意だった。

どうすれば、いい印象になるのか。

そんなことを考えながら日記をつける。

俺は反省しているのだろうか?

反省してねぇよなこれ。なんて思いながらやっていた。

今思えば、反省なんかしてなかったんじゃないかと思う。

 

夜には1時間、テレビが見れる。

いつぶりのテレビだろうか。

外にいた頃にはテレビなんて見なかった。

だけど捕まってから、テレビなんて全く存在すらなかったし、外と繋がれるのは面会くらいしかなかった。

そんな状況になって初めてテレビを見れた。

すげぇ嬉しく感じた。

早く外に出たい。

そんなことしか考えてなかったけどな。

 

実は留置場にいたころ、親が面会にきてくれたんだった。

俺は久しぶりに会った親に、

どんな顔をすればいいか分からなかった。

親は泣いていた。

俺も泣いた。謝った。

こんなことになるなんて思ってもいなかった。

全ては俺が悪いが、その時は本当に後悔していたんだろう。

 

鑑別所にも面会きてくれねぇかな。

そんなことを思いながら今日も眠りについた。

 

俺の鑑別所生活はまだまだ続く。

すんなり審判に行けるはずもなかったんだ。

俺は隠していることがあるって、言ってただろ?

留置場の取り調べの時、喋ってねぇこともたくさんあった。

鑑別所には警察が取り調べしにくることもできる。

 

俺は全てがバレたんだ。

素直に言っていれば、このまま1ヶ月過ごして審判を受けれたのによ。

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

【それからの留置場生活】

寝れたのか、寝れてないのか。

それすら分からないくらいの感覚で目覚める。

 

 

目の前は少し黒ずんだ天井。

隣には昨日会ったばかりの総長。

「起床点呼ー!!」

誰かのうるさい声だ。

「あ、看守か。そうだ。俺は捕まったんだった。」

俺は朝から実感した。

虚しい。帰りたい。これしかなかった。

 

だけど起きなきゃ、しょうがない。

留置場での、はじめての朝だ。

要領もなにもわからないが、見様見真似でやるしかない。

隣の部屋から順番に部屋を解錠し、開けていく音がする。

「解錠!!」

俺の部屋にきた。

布団はすでに畳んである。

それを外にだし、押し入れにしまう。

そのまま看守に見られながら歯磨き、洗面を行い

部屋に戻る。

 

次は掃除の時間だ。

またも解錠され、重い扉が開く。

看守は掃除機を持っている。

それを受け取り、俺は畳みたいな、ツルツルした床を掃除機で掃除した。

総長はトイレ掃除をだるそうにやっている。

なんとなく要領は掴めた。

 

その後は本棚に連れて行ってもらい、3冊まで部屋に持ち込んでいいとのことだった。

マンガもあるし、小説もある。図鑑みたいなのもあったな。

俺はそこで頭を働かせた。

 

仮に一日暇だったとしたら、マンガ3冊じゃ1日持たない。

小説を2冊混ぜるしかねぇか、、。

いや、マンガ2の小説1か?

マンガ3も捨てがたい。

初日だしマンガ3冊で行ってみるか。

 

俺は頭を働かせたのにも関わらず、すぐ読み終わるであろうマンガ3冊を部屋に持ち帰った。

 

しばらくして、俺は呼ばれた。

重い扉を開けられ、手錠をされる。

裁判所に行くらしい。

そう、捕まった人間は必ずまず、裁判所に行かなければいけない。

そこで罪状を確認されたり、弁護士をつけれるがどうしますか?とか、

家族に連絡しますが、誰にこの捕まっていることを伝えますか?

など、色んな複雑な手続きをしに行くんだ。

この時はもちろん、そんなことはなにも知らず、連れて行かれた。

初の護送車だった。

成人のやつらも乗ってきたのか、俺の周りのカーテンだけ閉められた。

何人か一緒で裁判所に行くんだろうなって思った。

揺られる車内。

さすがに外は眺められるようになっていた。

ただ、まだ全てに鉄格子。

両手には手錠。

それでも俺は外を眺めた。

護送車からみる社会は、すげぇ明るかった。

眩しすぎた。俺は帰りたかった。

タバコもそのころにはもう、中毒化していて、タバコを吸ってる人を見つけては、羨ましがった。

 

裁判所はめちゃくちゃに待たされる。

平気で3.4時間待たされるんだ。

それには本当に驚かされた。

両側を刑事に挟まれ、真ん中でずっと待機だ。

やってらんなかった。

 

車で待つ時間もあり、ぼーっと外を見てたんだ。

そしたらそこには、高身長イケメン野郎も刑事と一緒にいた。

なんだか、少し安堵した。

集団心理ってやつか。

あいつも同じような状況だということがわかると、

少し気が楽になった。

 

そんなこんなで、ずっと待たされていたが、いざ呼ばれてみるとすぐに手続きは終わった。

朝出てきて、気づけばもう夕方とか夜になっている。

裁判所ってすげー混む。

そんな記憶しか残らなかった。

弁護士は無料でつけられる国選弁護士というものがあったので、それを頼んでみた。

少しでも早く出たいという思いと、親に色々と伝えたいことがあったからだ。

正直制度については、未だに理解をしていない。

 

全ての手続きが終わると、また護送車に乗せられゆられながら、もといた留置場への戻ってきた。

気付けばもう夜だ。

9時には就寝し、また朝が来る

取り調べがある日も、ない日もあった。

 

取り調べに対しても誠実に応えるわけでもなく、隠していることもたくさんあった。

少しでもバレたくなかったんだ。

ただそんなわけにも行かず、別件がばれ

【再逮捕】

留置場っていうのは、そこにとどめておける期間が決まってるんだ。

10日更新の最大20日勾留。

基本的に最低20日間はいることになるんだが、取り調べをそれ以降もしたい場合や、まだ留置場に置いておかないといけない場合、なんらかの措置を取られ、勾留期間が延長される。

今回は再逮捕という形で、また20日間が繰り返された。

 

取り調べもしっかり終わりかけていた。

ただ俺はまだ隠していることもあった。

そんな状態のまま、取り調べのない日が続く。

ある程度調書を取り終わり、あとは20日待って鑑別所へと移送されることが決まった。

 

取り調べのない日は本当にやることがない。

天井と友達にのるか、小説を読みまくる以外にない。

俺は割と推理小説ばかり読んでいた。

そんなこんなで鑑別所に移送される日。

俺はやっと留置場の生活を終え、まだ留置場よりマシと言われている鑑別所にいけることを喜んでいた。

留置場から鑑別所へは、護送車でいく。

確か、鑑別所に行く前には裁判所にまた行かなければ行けない。

そこで県内、その日に鑑別所にいくと決まっている奴らが集まってくる。

そいつらが一斉に裁判所で手続きを行い、みんな鑑別所に連れて行かれる。

俺の共犯のやつも当然いた。

高身長イケメン野郎だ。

少し面白かった。懐かしい気がした。

お互い疲れ果てた顔をしてたんじゃないか?

 

ま、俺は内心鑑別所に行くのが少しドキドキしてたがな。

 

裁判所での面倒な手続きが終わり、鑑別所にいくやつらが一斉に護送車で送られる。

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車に揺られ、しばらくしたら車がある建物へと入っていく。

ここが鑑別所か。

俺はドキドキしていた。

車が車庫に入り、逃走防止のシャッターが下される。

その後扉を開けられ、中に入る。

手錠を外される。

教官みたいな奴らが5.6人立っていた。

隣には高身長イケメン野郎。

嬉しさや、安堵感からか。そいつに対して笑ってみた。

そしたらさっそく

「お前なめてんのか」

みたいな事を言われ、怒鳴られた。

「お前がなめてんのか」

って俺は内心思ったがなにも言わなかった。

 

基本的に共犯同士ってのは特に、関わらせないようにしているみたいだった。

中でもこいつと顔を合わせることはないんだろうな。って思ったら少し寂しくなった。

 

氏名、生年月日、住所を全て言わされ、物品の確認等、留置場と同じような事をされた。

俺の想像していたような場所とは違った。

すでに憂鬱になっていた。

 

『今日から俺も鑑別所生活が始まんのかよ』

お先真っ暗だった。

 

 

つづく

 

 

 

初逮捕

「今から取り調べをする」

俺は初逮捕を迎えた。

 

手錠をされたまま取調室の椅子に座らせられる。

手錠に繋がっている縄があるんだが、手錠をされる際、それを必ず腰に巻かれる。

椅子に座らせられると、まずその腰に巻かれた縄と椅子を縛られる。

そうしてから手錠を外され、逃げ出すとしたらパイプ椅子と一緒にしか逃げられない状態になる。

 

逮捕され警察署に連れて行かれた初日、

罪状を聞かされ、自分らが人を殴り金をとった件で捕まったことがわかった。

リュック眼鏡ヤンキーも当然、その件だった。

他にも一緒にやったやつがいて、その一緒にやったやつも逮捕されていた。

(これからそいつのことを高身長イケメン野郎と呼ぶ。)

 

その日夜までぶっ通しで、取調べをされた。

顔写真、全身写真、指紋の全てを取られた。

昼飯は、刑事が買ってきてくれた。

俺はすげぇ後悔の気持ちを持ちつつ、飯を食ったが表には出さなかった。

どこまでいっても強がり、弱みを出すことをしなかった。

取調べの最中、色んな誘導尋問があったり、リュック眼鏡ヤンキーと高身長イケメン野郎はなにを喋っているのか、なにを黙っているのか。

そんなことを考えながら、言葉を選び取調を受けていた。

やはり心のどこかで、少しでも罪を軽くしたい、あれもこれもバレたらどうなってしまう。と

あれこれ考えて、極力黙っているようにした。

 

取り調べを始める際、必ず

【黙秘権】というものについて毎回説明をされる。

あなたは秘密を黙っている権利、喋らなくてもいい権利はありますよってものだ。

要は人権は捕まったあなたにもありますよってことだろ。

俺は言葉に困り、なにを喋ったらあの件がめくれるとか悩むときには、ひたすら黙った。

なにを言われても黙る。黙秘権。

それでも刑事は

全部喋れよと怒鳴ってくる。

黙秘権の説明をお前がしたのに矛盾してんだろ、と言い合いになることもしばしばあったな。

 

そんなこんなで一日の取り調べが終わったんだが、

その後はどこにいくと思う?

 

そう、留置場だ。

俺はこの時初めて留置場の存在を目の当たりにした。

取り調べが終わり、また手錠をはめられる。

そのまま腰縄を持たれ誘導され連れて行かれる。

警察が俺をじろじろ見てくる。

中学生の見栄なのか、睨みをきかせなんてことない顔で歩く。

 

ある一室に連れて行かれた。

【看守】と呼ばれる留置場の担当をしている警察が待ち構えていた。

「解錠ーーーー!!!」

とその看守は大声でいいながら、重そうな扉を開ける。

そこに入ると、そこはまだ留置場ではなかった。

もう1枚、分厚い扉があった。

その部屋で、本人かどうかの確認をされた。

また先程と同様、

看守はでけぇ声を出して、扉を開ける。

そこには、鉄格子だらけの部屋がたくさん並んでいた。

興味深そうにこちらを見てくる、捕まったやつら。

成人と少年は部屋が違うみたいだ。

俺が通り時に、カーテンをかけられる部屋があった。

恐らくそこには捕まっている成人がいるんだろう。

少年保護法と謳っているだけに、俺の姿は20以上のやつには見えないように工夫はされてるんだな。って思った。

 

まずは鉄格子の部屋じゃなく、物品を確認したり、変なものを隠し持っていないかの確認をするため、別室に連れて行かれた。

 

そこでは服を全て脱ぐように命令された。

俺はなんかのマンガか、噂話に聞いたことはあったが、けつの穴まで全て見られるのか、あれは本当なのか?と心配になった。

服を全て脱ぐと、恐れていたことを言われた

前屈みになってけつを見せろ。と。

 

やはり全てを調べてくる。

俺は心の底から恥ずかしくなった。

情けなくなった。なにしてんだろって。

それでも俺は平然を装っていた。

 

今までけつに何かを隠し持っていたり、タバコを隠して持っていき吸ってるやつとかがいたらしい。

そのため、ここまで調べるんだと俺は聞かされた。

 

持ち物をすべて確認され、留置場のルールもすべて説明された。

あと俺には名前じゃなく、

番号がついた

今後は〇〇番と呼ばれることになるみたいだ。

 

携帯はすでに刑事に押収されていた。

そして、部屋にはもうすでに一人いると聞かされた。

共同部屋だ。

留置場のルールとは、その当時の記憶を辿り思い出すと、7時起床(8時だったかも知れない)の9時就寝。

朝起きてから、掃除の時間がある。

共同部屋の場合は、トイレの掃除をするか、床に掃除機をかけるかで分かれるみたいだった。

そして洗顔、歯磨きをし、そこからは取り調べに呼ばれるか、それがなけりゃ部屋にいるかのどちらか。

面会は人によって会えるひとの範囲は違うが、基本的に親族はできるみたいだった。

 

夜は8時頃に歯磨きの時間があり、布団を外から部屋に運ぶ。

9時には消灯だ。

自分の持ってきたお金や、差し入れしてもらったお金で買えるものもあるみたいだ。

 

ひととおりの説明を受け、部屋に連れて行かれる。

そこには髪の長い、すこしひょろっとした目つきの悪いやつがいた。

部屋の鉄格子の扉を開ける時にはまた、

「解錠ーー!!!」

と看守が叫び、重い扉を開けられる。

 

 

部屋にはなにもなかった。

トイレがあるだけだ。

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ネットから拾ってきたものだ。

もちろん、こんなに綺麗じゃないし、塗装も剥がれまくりだったが、おおよその作りは一緒だ。

トイレには小窓があり、そこから見えてしまう作りだ。

自殺するやつも居たみたいだから、その対策らしい。

 

普段部屋にあるものはトイレと毛布だけ。

あとは何もない。

外の本棚から本を3冊まで持っていくことができるが、一日の途中で変えることはできない。

だから部屋にあるのは

トイレ

毛布

本3冊

一日中取り調べがないことだってある。

そんなときはひたすら本を読むか、天井を眺めるか、筋トレするかしかない。

一日中暇なときは、ほんとに辛い。

時計もない。

時間がわからない。

昼食配りまーすと言われれば、

あー12時くらいか。ってわからるくらいだ。

 

飯は3食でる。

留置場の部屋の大きな扉の左下にちっちゃい窓みたいなところがある。

食器口だ。

飯の時間になるとそこを開けられ、そこからご飯を配られる。

飯が出されるだけマシだとは言われると思うが、中にいるやつからしたら、本当に食えたものではない。

朝飯なんか特にだ。

おかずなんてない。

米もまずい。

中学生の俺はやってられなかった。

 

飯だ!!とその食器口から通される飯をみて、すごく情けない気持ちになる。

捕まったんだと実感する。虚しかった。

 

一緒の部屋になったやつは中学生の俺からして3個年上の別の地区の暴走族の総長だと言っていた。

本当か嘘かはわからないが、色々と喋った。

中に入ると、やはり寂しさからか見栄がすこしなくなる。

そしてよくしゃべり、自分と似たような状況のやつを見つけては安心したがる。

そいつは、鑑別所ってどういうところかっていうのを教えてくれたら。

2回目の逮捕らしいから、よく知っていた。

留置場の後には、どうなるのか。

この後俺はどこにいくのか、どうなるのかも全くわからなかった俺は、色々情報を集めようと必死だった。

 

そんなことを考えて、喋りながら留置場初日は終わりを迎えた。

逮捕された初日の夜、本当に眠れなかった。

一睡もしていないんじゃないかな。

寝ているフリをしていないと、看守がうるさいから夜の間中天井を眺めていた。

色々な感情が湧いてくる。

帰りたい。普通に家で寝たい。

 

ふと、親の顔が浮かんできた。

俺は別に親に不満もなく、恨んでいたこともない。

ただただ、ぐれてしまい、不良を極めたかっただけだった。

申し訳なさがあった。

寝れない夜にそんなことばかりを考えいた。

 

気付けば俺は泣いていた。

静かに泣いた。涙が止まらなかった。

となりにいる総長に悟られないよう、涙を流していた。

 

【初逮捕】完

 

【それからの留置場生活】へ続く

 

 

 

 

 

 

 

-中学編-逮捕への道

金もないのにタバコを吸う。

金がないからタバコも買えず、灰皿の中からしけもくを探す日々。

それも確かに楽しかったし、タバコを奪い合うためのゲームも考えたりして、楽しかった。

カゴダッシュもなかなか上手くいかなくなり、

金が必要になり始めた中2の俺らは、さらに犯罪を重ねるようになる。

 

気付けばすでに通行人を恐喝するようになっていた。

通りがかる人に因縁をつけて回る。

自分らからぶつかっていくくせに

「今ぶつかっただろお前」

「怪我しちゃったじゃねぇかどうすんだよ」

 

相手は普通のサラリーマンだ。

こっちは2.3人いる。

例え中学生が相手だとしても、勢いよくこられるとやはり怖いのか、素直に財布の中の金を渡す人が多かった。

中学生の俺らに諭吉が何人もいるのは、跳ね上がるほど嬉しいことだった。

その金を何に使ったかは、今となっちゃ全く記憶にないが。

 

ある日、少し遠出しようぜ。と自分らの学区を超え、地域を超え原付き2ケツ合計3台で出かけたことがあった。

その行き先で警察に追われ、原付を乗り捨てることにはなったが、なんとか逃げ切った。

逃げている最中、警察署の前を通過したんだが、そんときに出てきた、長い棒を持った警察にフルスイングされたことは今でも忘れない。

 

原付きを遠出先で失った俺らは、原付を現地で盗み、帰った。その出先でも当然の如く恐喝もした。

場所はスターバックスコーヒーの店内だ。

「あとで金返すから、貸してくれ」

知らない人にそんなこと言う俺らはどうかしてたが、あれは完全なる恐喝だと言うことは、相手もやかってたんだろう。

素直に金を

"貸してくれた"

未だに返してもいないし、誰かもわからないが。

 

そんな日々を繰り返していたある日、

普段通り恐喝しても全く金を出さないやつに遭遇した。

いくら脅しても金はださないの一点張りだ。

そこで引けば、恐喝(それでも十分犯罪だが)で済んだんだが、そうはいかなかった。

俺らは

「舐められている」

と思ったんだ。

その頃の俺らのプライドは

"舐められないこと"

でしかなかった。

 

その金を出さないやつを公園に連れて行き、リュック眼鏡ヤンキーがそいつの前歯を折ってしまった。

拳に歯が刺さっていた。

さすがの俺らも

"やってしまった"

ということくらい、すぐに分かった。

だけど中学生の俺らには変なプライドがある。

そんなことは微塵も見せず、恐喝を続け、金を奪い逃げた。

 

次の日も同じようなことになった。

手を出して金を取ることが、当たり前になってしまった瞬間だった。

 

原付を盗みまくっていた時点で、当然警察は動いていただろうが、この時ばかりは全力で動き始めたんだろう。

家を溜まり場にし、めちゃくちゃになっていた俺を

止めることも、どうすることもできなかった母親に恐る恐る、次の日言われた。

新聞に少年数人組の強盗事件がって書いてあるけど、まさかあんたじゃないでしょうね…。

って。

その通りだよ母ちゃん。って思ってたけど、俺は平然を装い、

「さすがにそんなことはしねぇよ」

って言い放った。

内心俺はすでにビビっていた。

警察が自分らを探している。

犯人探しに本気を出している。

数日、自分がどうなるのか心配でたまらなかった。

しばらく経ってもまだ何も起きない。

警察に事情聴取もされない。

 

喉元過ぎれば熱さ忘れる、とはこのこと。

日にちが経てば、自分らがしでかしたことは忘れていた。

 

ある日、ツレのリュック眼鏡ヤンキーから電話がはいった。朝の6時頃だったかな。

「家に警察がきた」

俺はそのときに思い出した。

あの時の件か?

今まで警察に世話になったことは、事情聴取と、調書の作成、夜の補導くらいしかなく、

逮捕という概念が俺らにはなかったから、

またすぐに戻ってくるだろ

なんて軽く考えていた。

 

けどその日からリュック眼鏡ヤンキーとは連絡がつかなくなり、次の日には携帯の電源が落ち繋がらなくなった。

どうなってしまったのか。

俺らはずっと心配していた。

 

『ピンポーン』

ある朝家のチャイムが鳴り目が覚めた。

俺は二度寝しようとして、目をつぶっていた。

「警察の人がきてるけど、あんたなんかしたの」

そんな母ちゃんの声に

二度寝しようとしていた俺は起こされた。

俺はさすがに悟っていた。

リュック眼鏡ヤンキーが帰ってこず、連絡がつかないことも知っていたから、俺もその件なんだなって。

それでも【逮捕】なんてことは、想像もしていなかった。

俺は家の扉の前で待っている警察5.6人を待たせ、タバコを2.3本吸った。

正直、気持ちは最悪だ。

どうなるかもわからない。

親にも心配もかけている。

どうしたらいいかわからないから、タバコを吸うしかなかった。

俺は覚悟を決め、家を出て私服の警察の前に姿を現した。

覆面パトカーに乗せられ、なぜか後部座席の真ん中に座らせられ、両側を私服警官に挟まれる形で座らせられた。

 

そこで見せられたのは

【逮捕状】だった。

初めての経験だった。

罪状、日付、時間、名前などが書いてある1枚の紙だった。

現実味は湧かなかった。

なにが起こってるかも、なにをこれからされ、どうなってしまうのか。

全く知識もなく、悪さばかりをしていた俺にはわからなかった。

 

「○月○日○時○分○○を逮捕する」

そう言われ、冷たい鉄が手首にかけられた。

【手錠】だった。

俺は心底焦っていた。

マンガとかでは見たことあるし、ニュースでも見たことはあるけど、本当に自分が手錠をかけられるなんて、考えてもいなかったからだ。

中学生だから大丈夫だろ。

そんな甘い考えもあったんだと思う。

頭は真っ白だった。

リュック眼鏡ヤンキーも、こんな風になったんだろうなって、俺だけじゃないんだって、仲間意識を持つことで自分を安心させていた。

 

そのまま連れて行かれた場所は、当然警察署だった。

手錠をされたまま、裏口から警察署にはいる。

逮捕された奴は表からは入れなくなっている。

全て裏口だ。

逃走防止のため。

 

そのまま取調室に連れて行かれ、

長い時間をかけ、すべてのことを聞かれていくことになる。

俺はこのままどうなるんだ。

なにを喋って、なにを黙っておいた方がいいんだろう。

色んなことを頭の中に想像しながら、取り調べが始まった。

 

「今から取り調べをする」

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【初逮捕】へ続く